「いのちの乳房」

部屋の窓を開けると金木犀の香りが流れ込んできて、何処にその木があるんだろうと見上げるけれどわからなかった。金木犀がまるく散り敷くのも好きだ。


『いのちの乳房』の紹介が早々と読売新聞に載って、連日ご予約のお電話を受ける。乳癌の手術をされたと話す方、娘がそうなのと言われる方、美容院を経営しているからお客さんに必要とする方がいるかもしれない、、、そんな声を聞いていると、情報という断片ではなくて、この写真集を求めてくださる気持ちが、怖いほど伝わってくる。
本であること、写真であることに、人は思いを深く寄せる。
荒木さんが撮り下ろした写真は素晴らしくて、突き詰めて言えば「顔」なのだ。
写真集という存在を、電話の声から語りかけられている。