澁谷征司写真集「DANCE」がコマーシャルフォトに紹介されました!

コマフォト写真.JPG

澁谷征司写真集「DANCE」がコマーシャルフォト3月号に紹介されました!!

マッチアンドカンパニーの町口覚さんが気になる写真集を紐解いていくという「解体」のコーナーで紹介されています。
皆さん、ぜひ手に取って読んでみてください!!

以下の文章は紹介文です。

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2冊目の写真集「DANCE」を
デビュー写真集と見比べることで
澁谷征司の写真は読み取れる


 ゆらぎをゆらぎなく正面から撮ることができる写真家は数多くいる。しかし、ゆらぎなくゆらぎを正面から撮れる写真家は希少な存在だ...。

 写真家の澁谷征司さんが、ゆらぎをゆらぎなく正面から撮った写真を写真集「BIRTH」(赤々舎)にまとめて発表したのが2008年1月。
 写真集「BIRTH」は、シルバーの目の細かい布クロスの上製本の表紙に、しっかりと圧力をかけた空押しを施し、本文用紙とは異なる用紙に印刷された写真を題箋貼り。その上位にレイアウトされたタイトルと著者名は、細く小さなフォントを繊細にブラックで箔押しされている。本文用紙も連量が重い高級アート紙を使用。プロセスカラーで丁寧にオフセット印刷された写真面の上には、版ズレなくグロスニスが引かれている。
 写真は、1997年から2006年までに撮影された66点を6つのチャプターに分けて構成されている。
 この造本的にも写真構成的にも隙のない写真集を手に持って頁を捲ったときの俺の印象は、デビュー写真集としてはあまりにも写真集が完成されすぎていて、そのゆらぎをゆらぎなく正面から撮った澁谷さんの写真の世界に入り込むゆとりがなかった。

 この澁谷さんの二冊目の写真集「DANCE」を、敢えて一言で解体すると"対話"だ。
 前作と比べ、造本の軸は大きく変わらないにせよ、写真のレイアウトが決定的に違う。写真構成も軸は大きく変わらないにせよ、写真のセレクトが決定的に違う。それは、写真集をつくる側が、しっかりと双方向かい合って話をしてものづくりに挑んだ結晶を、この写真集を見た俺が読み取れたからなのではないか。

 解体後、発行者であり編集者でもある姫野希美さんにお会いすることにした。忙しい時間を割いていただき、久しぶりに訪れてくれた俺の仕事場で少しお話をした。
 アートディレクターの近藤一弥さんが惚れ込んでいた澁谷さんを姫野さんに紹介してくれたということ。「BIRTH」の完成度の高さは、近藤さんのアートディレクションの手腕が大きかったということ。2009年5月から6月にかけて赤々舎のギャラリーで開催(「8人の写真家たちによる実験」参加作家:浅田政志、ARIKO、黒田光一、澁谷征司、高橋宗正、殿村任香、旗手浩、鷲尾和彦)した、澁谷さんのスライドショーを観て、澁谷さんの写真には、いくつものレイヤーが存在し、奥行があり、時間が限定されない、という印象を持ち、それが写真集「DANCE」の原型となっているということ。そして、それは同時に、澁谷さんの不完全な何かに惹かれ、「BIRTH」から抜けているものに姫野さんが惹かれたということではないか...。
 最後に、ゆらぎをゆらぎなく正面から撮る、ということと、ゆらぎなくゆらぎを正面から撮る、ということとの違いは、「BIRTH」と「DANCE」を見比べることで読み取ることができる。


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コマーシャルフォト様、町口覚様、読者の皆さま、ありがとうございました!!