Memoires 1983

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Memoires 1983
古屋誠一 写真集
4,300円+税 | 228 × 193 mm | 312頁 | 並製本
アートディレクション : 古屋誠一
Memoires 1983
Photographs by Seiichi Furuya
4,300JPY | 228 × 193 mm | 312 page | softcover
Art Director : Seiichi Furuya
ISBN : 978-4-903545-03-5
Published in October 2006




About Book

写真家・古屋誠一、日本では実に9年ぶりとなる待望の新刊。1978年に結婚し85年に自ら命を絶った妻、クリスティーネの遺した手記が初めて読み解かれた。追憶の中でいつも行き着く83年、その1年間に撮影された古屋の写真とクリスティーネの手記が、厳然とした時系列に沿い緊張感をもって展開される。写真集が作品そのものである古屋の営みには、記憶の向こう側からやってくるものを凝視しようとする眼差しが深く、時間を意識の中に取り込む表現に新たな可能性を提示している。

パリで初めて彼女の手記を読んだ。 迷ったあげく「読めない」手書きドイツ語の手記を清書する決意をした。グラーツの街影もやがて闇の中に消えようとする、年の瀬も迫ったある日の午後、僕は知り合ったばかりの女学生に3冊のノートを手渡した。 1989年以来僕はこれまで6冊の写真集を編んだ。いずれも85年10月、東ベルリンで亡くなった妻、クリスティーネを想いながらつくったものだ。精神に異常をきたし、やがて自殺に至ったのだという平明な解釈では許されない「なにか」がずっとつきまとってきた。世に出た写真集は悲哀の主人公を生み、僕の無能さや、さらに覗き見的悦楽行為を指摘することにもなった。「事件」の当事者の一人であること、そしてそれを編むものでもあらねばならないということへの限界を感じ始めていた。

手記の存在を彼女の亡き後に知ったのだが、それを読むことはなかった。追憶の旅でいつも行きつく1983年、この年は僕の中で混乱し続けてきた。彼女の「異常」な言動が目立ち始め入院に至ったのはこの年の春だった。いま彼女が一年に渡り25回分の手記を残していることを知り得たが、7、8、11月と12月には記録がない。発見できなかった可能性が大きい。この年に150本あまりの35mmフィルムを僕が撮影したことも確認できた。 「事件」の残響から逃れるようにグラーツを発ってから2ヶ月が過ぎようとしていた。床一面に並べたコンタクトプリントを行き来する日々だった。タイプ打ちされた清書に赤い点線と疑問符、女学生も解読出来なかった部分だ。僕はまだ読みつづけた。ゆっくり、一字一句ゆっくりと追いながら日本語に訳していった。 3月末パリを去る頃、1983年に綴られた彼女の手記と僕の写真とで1冊の本を編んでみようと決意した。

古屋誠一/2006年6月/グラーツにて



"Memoires 1983" takes the reader through the entire year of 1983, in chronological order, using the photographs of Seiichi Furuya and the corresponding journal entries of his late wife Christiane. The reason for choosing 1983 is that it was in this year in which Furuya began to notice the symptoms of Christiane's depression, which would eventually lead to her suicide in 1985. Furuya felt that, with some greater distance from these events, it was important to show his photographs and Christiane's words together. Furuya's photographs tend to show his daily life in Austria, focusing on Christiane and their young son. It's now difficult to see them as anything but signals of the cruel fact that the two people were heading on different paths.
Christiane Gossler's diary entries appear in the original German and Japanese.

Book Previews

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Artist Information

古屋誠一 | Seiichi Furuya

1950年静岡県生まれ。東京写真短期大学(現・東京工芸大学)卒業。1973年にシベリア経由でヨーロッパに向かい、各地に点住し1987年以降はオー ストリアのグラーツを拠点に活動。「カメラ・オーストリア」誌の創刊、編集、「フォルム・シュタットパルク」の活動に参加し、日本の写真家をヨーロッパに 紹介するなど、幅広い活動を展開している。写真集に、1980年に滞在したアムステルダムからなる写真集「AMS」また1978年に結婚し1985年に自 ら命を絶った妻クリスティーネの肖像やヨーロッパ各地を撮影し続ける《Gravitation》シリーズ を 編んだ「Memoires」、「Seiichi Furuya Memoires 1995」や「Christine Furuya-Gossler Memoires, 1978-1985」、「Portrait」がある。2002年、「Last Trip to Venice」で第27回伊奈信男賞受賞。2003年、日本の現代写真家を紹介する展覧会「Keep in Touch」をグラーツにて開催。2004年、ウィーン・アルベティーナ美術館にて個展開催と同時に「alive」を出版、さがみはら写真賞を受賞。 2006年10月に赤々舎より、初めて公開するクリスティーネの手記を基に編集された写真集「Memoires 1983」を出版。


Born in Shizuoka, 1950. Graduated from Tokyo Polytechnic University. Since 1987, lives in Graz, Austria. Founded and Edited ' Camera Austria', introducing Japanese Photographers. Published 'Memoires', 'Seiichi Furuya Memoires 1995', 'Christine Furuya-Gossler Memoires, 1978-1985', etc. Won the 27th Ina Nobuo Photography Award, and Sagamihara Photography Award in 2004.