MASQUERADE

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MASQUERADE
澤田知子 写真集
2,500円+税 | 200 × 200 mm | 56頁 | 上製本
アートディレクション : 鷺草デザイン事務所

MASQUERADE
Photographs by Tomoko Sawada


2,500JPY | 200 × 200 mm | 56 page | hardcover
Art Director : Rosou Design Office

ISBN : 978-4-903545-02-8
Published in July 2006










About Book

2004年に木村伊兵衛賞とICP Infinity Award for Young Photographerをダブル受賞し、内外での活躍がいよいよ目覚しい澤田知子。様々な人に扮したセルフポートレイトを撮り続ける写真家の最新作シリーズは『MASQUERADE』(マスカレード)です。
篠山紀信氏による帯文に「澤田知子さん似のキャバクラ嬢50名。ぼく好きです。ぼく愛せます。癒されます。元気が出ます。全員指名します」とあるように、このマスカレード=仮面舞踏会の舞台はキャバクラです。現代的でライトなゴージャス感に満ちたこの舞台は、本来的には人間の長い歴史に常に存在した空間であり、仮面性と仮面性がせめぎ合う場所でもあります。澤田知子は一貫して「外見と内面の関係」をテーマとしてきましたが、この作品では"顔"に焦点を絞り、仮面かもしれないしそうでないかもしれない、誰もがその狭間にある、仮面性そのものの底知れぬ不思議と魅力を問いかけてきます。 "顔"の力に圧倒されながらページを繰るとき、読者は社会性や美意識の規範を超えた、より本能的な視線を注いでいるのかもしれず、50名の彼女たちの"顔"の前に晒されているのは、人間の本質に根差す何か、なのです。『MASQUERADE』は、澤田知子の展開において、一層大きな批評性とインパクトを獲得した作品と位置づけられます。

「MASQUERADE」展開催にあたって ―後藤繁雄
僕は写真について語る時よく、「写真が、できること」と「写真で、できること」の2つについて指摘する。写真が誕生して、200年もたっていないが、その間に、写真はあらゆる対象を撮りまくってきた。ポートレイト、風景、さまざまなオブジェ。人の欲望とカメラの欲望が共犯しあい、「イメージ」を活けどった略奪史と言ってよい。さて、あとまだ写真になっていないものは何だろう?と「写真」は考える。その衝動に加えて、いつの頃からか、「写真を使って」表現するというアプローチも生まれた。昨今の、コンテンポラリー・アートにとって写真というメディアは不可欠な存在でもあって、こちらは「頭脳プレイ」としての写真追求の道と言ってよいだろう。
さて、ならば澤田知子における写真とは何なのだろう?写真史をふり返るまでもなく、「写真」は風景とポートレイトからはじまった。他者を所有し続けること、これはマルセル・プルーストを写真狂に走らせた欲動だが、「顔」を「写真」にすることは、「写真の力」の決定的な起源である。澤田知子は現代のさまざまな女性にコスチューム・プレイしたり、職業にロール・プレイする。彼女はシンディ・シャーマンや森村泰昌のような変装するアートとして語られることが多いが、実は、徹底した「起源の写真」のアーティストなのではないかと僕は思う。変装していても彼女が狙っているのは、変装の見事さではなくて、「顔」の力なのである。一見、「写真で、できること」のフィールドに進みつつ、彼女は、そこにおいて再度、「写真が、できること」の起源を問い続けているのだ。   この『MASQUERADE』展は、澤田知子の原点とも言うべき「ID400」以前の初期作・旧作に加え、ホステスやリクルート、ガングロ、顔をはぎ続ける「MASK」などの新作で構成される。澤田知子が写真というものに対峙し続けた10年の総決算でありかつ、いよいよ本格化する彼女の写真戦争宣言とも言うべきものなのだ。 再度言う。澤田知子の写真を、コスプレアートだと思ってはいけない。これは、写真史第二ステージの、重要な始点となるべき展覧会なのである。
  (MASQUERADE展プロデューサー/KPOコミッティー・メンバー/京都造形芸術大学ASP芸術表現・ アートプロデュース学科長)

「MASQUERADE」展によせて ―澤田知子
私がセルフポートレイトを撮り始めたのは、大学での写真の授業で「セルフポートレイトを撮る」という課題がでたことがきっかけでした。
それからセルフポートレイトを撮り続けて今年で10年になります。この度の「MASQUERADE」展では、その10年前の初期作品とあわせて、今もっとも興味がある"顔" を中心としたシリーズで構成しました。自身の「外見と内面の関係」という大きなテーマはずっと変わっていませんが、そのテーマの中で様々に私自身の考えや想いは変化し、興味の中心も移行していきました。初期の作品と最新の作品、そして今まで行ってきた「OMIAI」シリーズの人気投票の途中結果発表とともに、この度の展覧会での人気投票にもご参加いただき「MASQUERADE」展を楽しんでいただければと思います。
10年前アーティストになりたいという強い気持ちはありましたが、何を作れば良いのか、自分にあった手段は、テーマは何なのか、様々なことを考え悩みながらも、初めてKPOキリンプラザ大阪を訪れた時に、いつかここで私も個展を!と願っていた夢を10年目にして叶えることができ大変嬉しく思っています。いつも多くの方に支えられ10年間続けてこられたこと、この展覧会を開催できることに感謝し、これからも頑張りたいと思います。

"MASQUERADE" is a series of self-portraits in which Tomoko Sawada completely changes her makeup and hairstyle for each photograph. Still, although she becomes a different woman on every page, these self-portraits always maintain the concept of "outside and inside." All of the photographs fit a particular type: Sawada's clothes and heavy makeup, as well as the way the photographs are shot, make them look like photographs of hostesses which would be displayed outside a "kyabakura" club, most likely in one of Japan's seedier neighborhoods. While a "kyabakura" club is not a brothel, it's a place where men pay money to talk to and drink with women who are made up in the exact style that Sawada has chosen. She's gone as far as to completely whiten her face, which heightens the difference in hairstyle and makeup from one photo to the next. While "MASQUERADE" could be read as a comment on Japanese culture, it's also a masterfully executed performance. This book won the 2003 Ihei Kimura Photography Award, while Tomoko Sawada won the 2004 International Center of Photography Infinity Award (Young Photographer category).

Book Previews

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Artist Information

澤田知子 | Tomoko SawadaHP

1977年神戸生まれ。成安造形大学デザイン科写真クラス研究生修了。大学の卒業制作で撮影した「ID400」が、2000年に新人アーティストの登竜門的存在のキャノン「写真新世紀」で特別賞を受賞。その後、成安造形大学デザイン科写真クラスの非常勤講師をしながら、様々な人に扮してお見合い写真をとった「OMIAI」、ガングロギャルに扮した「cover」など、次々と作品を発表。2003年に発表した「Costume」とそれまでの活動が評価され木村伊兵衛写真賞を受賞。同時にニューヨーク国際写真センター(ICP)主宰の「The Twentieth Annual ICP Infinity Award for Young Photographer」も受賞。海外での評価が非常に高く、NY、ロンドン、ベルギー、ウィーンなど世界各国で展示会を行なっている

Tomoko Sawada was born in in Kobe, Hyogo, Japan, in 1977. She graduated from Seian University of Art and Design in 2000 and completed a postgraduate course the following year. In 2000, Sawada was awarded a Special Prize in the Canon New Century of Photography competition. In 2004, she won the 29th Kimura Ihei Memorial Photography Award and the Young Photographer in New York Award at the twentieth Annual Infinity Awards. She held a solo exhibition of her work at Zabriskie Gallery in New York in 2003. Her work has also been shown as part of group shows like "The Self" (Photoespana, Madrid, 2002) and "About Face: Photography and the Death of the Portrait" (Hayward Gallery, London, 2004). Sawada currently lives in Kobe.